
昔ばなし:冬のジャンプ中継編
(今回は、完全にブログです(笑))
●まず伝えておきたいこと
たまにこの業界に興味を持つ人などから、「仕事をしていてつらいこととか、つらかったことありますか?」と聞かれます。
実は、結構これが困る質問で(笑)
この仕事をしていて、正直「つらいな」と思うことはほとんどありません。
人との出会いも多いし、現場ごとに違う景色があって、毎回新しい刺激がある。
嫌なことやしんどいことよりも、「やっててよかったな」と思える瞬間の方が圧倒的に多いんです。
なので、いざ「昔は大変だったな」と思い出そうとしても、なかなか具体的に出てこないくらい(笑)。
ただ、ふと冬のジャンプ競技の中継のことを思い出したとき、「ああ、あれはなかなかだったな…」と、ちょっと懐かしくなりました。
ということで、今回はちょっと大変だった昔話です。
●命の危機を感じる寒さとの戦い
冬季スポーツ中継は、今思えば“修行”のようなものでした。
特にスキージャンプ競技の現場は、山の上から下まで凍えるような寒さ。
スキーウェアを何枚重ねても風が吹き抜け、指の感覚はすぐに失われる。本気で「これ、命の危機かも」と思ったことも、一度や二度じゃありません(笑)
●すべて自分たちで準備していたあの頃
当時はまだ、足場(イントレ)を専門業者に依頼するという考え方も一般的ではなく、設置から撤収まで、すべて自分たちの手で行うのが常識でした。
当然、セッティングの知識も必要ですし、安全面の配慮も自己責任。雪で滑る中、カメラを担ぎながら不安定な足場をよじ登ることもありました。
●ケーブルを引くために山を何往復も
一番苦労したのは、やはりケーブル周りの作業です。
ジャンプ競技のように縦に長い会場では、山頂からスタート位置、中腹のカメラポイント、ゴールエリアまで、何百メートルにもわたってケーブルを敷設しなければなりません。
今では一部のケーブルが埋設されていますが、昔はゼロから引くしかなく、しかも当時のリフトは小さく、運搬能力も限られていたため、 重いケーブルや機材を抱えて山を往復もする必要がありました。
セッティングの前日や当日に数十センチの雪が降ると歩くだけで大変ですし、雪が少なく表面が凍っているとケーブルが滑ってそのまま下まで落ちてしまう事もありました。
誰かにぶつかったら大けがにつながりかねません。そして、一番の仕事はレンズ運びです。ジャンプ台の中腹から選手を寄りでフォローするカメラに付けている望遠レンズは恐らく30キロはありました。
それを手で担いで運ぶには危険(転んだりしたときに落としたり、手を突けないので)、大きなリュックのようなものにレンズを入れ、背負って歩く人、後ろで支える人、前で誘導する人といった3名体制で休み休み運びます。これが若手の登竜門的な試練でした。
この時ばかりは、マイナス10度以下の極寒でも、みんな汗だくになり、上着を脱ぐと背中から湯気が立ち上っていました。今思い出すといい思い出ですが。
●大会終了後も終わらない作業
ジャンプの大会そのものは日中に終わっても、そのあとの作業が大変なのがこの仕事。
現場の撤収、テレビ局に帰ってからの機材撤収など、 夜遅くまで対応が続くのが当たり前でした。
それでも、当時のチームがいたので声をかけ合いながら作業を終えるあの感覚。
ただの仕事ではない、仲間と“戦い抜いた”という一体感があったのを覚えています。
●今は、随分と変わりました♪
今ではイントレは専門業者さんに頼めますし、 ケーブルもあらかじめ敷設済みの現場が増え、機材の運搬も大型のリフトで安定して行えるようになりました。
中継自体もワイヤレスやIP化が進んでいて、当時のような“気合と根性”に頼る場面は減ってきています。
もちろん、現場の大変さが完全になくなったわけではありませんが、あの頃と比べると、体力的にも精神的にもかなりラクになったなと感じます。
●でもあの頃はあのころで楽しかった(笑)
現場のスタイルはどんどん進化して、効率も安全性も格段に良くなりました。
だけど、たまに冬の冷たい風にあたったときや、ふと古い中継の映像を見返したときに、
「あのとき、ほんと寒かったな」「ケーブル持って山登ったよな」と懐かしく思い出すことがあります。
実際大変ではありましたが、やっぱり好きでこの業界にいるのでそれもひとつのいい思い出です(笑)
最後まで昔話にお付き合いいただきありがとうございました。
●現場のこと、映像のこと、なんでもご相談ください
昔話を書いていたら、あらためて「現場って、やっぱりおもしろいな」と感じました。
今は機材も仕組みも進化して、できることがどんどん広がっています。
「こんなことできるかな?」
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